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第4回創建フォーラム恒志会 2011.11.23


「呼吸と咀嚼が正しく行われるならば百歳まで生きられる」  黄帝内経より
(現存する中国最古の医学書)
― 100歳の人生を見据えた歯・口と脳づくりのための手入れ −


● はじめに

 「医者の考える人間像はすべて病人から導き出している」 …アレクシス・カレル…
医療は病気を扱うこと、医師が健康な人を扱わないことの不思議さそして“いつまでも自分の歯で食べたい”という患者さんの願いと二律背反の様相の歯科医療、歯科医術の進歩、2007年に超高齢社会を迎えこれまで経験したことのない長い老後を出来るだけ健康に過ごしたいと切望する方に対する対応法…等々
現在の歯科医療が抱える「限界」についてその意味を汲み取り、ベクトルを変えることで21世紀に見合う歯科医師としての生き方、歯科医療の提供が出来ないものか、そして口腔及び口腔周囲に限定した範囲だけではなく患者さん本来の健康にアプローチする方法はないかと考えました。


 『100歳の人生を見据えた歯・口と脳づくりのための手入れ』


健康脳づくりをするために必要なものは何か、歯・口の手入れを脳の栄養と呼吸、咀嚼との関連性を見ながら検討していきます。
脳の栄養
@ 酸素
A グルコース(糖)
B 情報(経験)
この3つが大切になります。

 酸素とグルコースは、血管によって運ばれ情報は血管を介さず細胞にたどり着きます。
細胞をたどる情報というのは、ネットワークすなわち線維です。(株)脳の学校代表 加藤俊徳先生(医師・医学博士)によると「酸素が結合した赤血球が血管の中を運ばれそして毛細血管で赤血球が酸素を離して脳細胞に飲み込まれていくので酸素が脳細胞の栄養になる」ということです。
 また、グルコースは血漿(プラズマ)の中に溶けて運ばれ脳細胞に取り込まれます。
外界から脳が受ける情報は、色々な感覚受容器の細胞が情報を得て、線維連絡によって皮質の神経細胞側に伝えられると言われています。情報がやり取りされると、エネルギーが使われ、酸素やグルコースが必要になります。



● 呼吸と脳

 呼吸で空気中の酸素を取り入れます。脳にとって酸素は脳神経細胞、そして何より脳神経線維に大きな影響を与えます。線維とはつまり、脳のネットワークのです。
 このことに脳を育てるヒントがあります。「頭は使えば使うほどよくなる」と言われていますが言葉を変えると、「酸素を使えば使うほど頭が良くなる」という事になります。酸素を使うとなぜ脳が育つか、育てて行くかというと、筋肉(特に加圧トレーニング)と同じで多少の低酸素状態(毛細血管からの酸素の取り込み)の時、脳の働きがいわゆる“活性化”した状態になります。
 この毛細血管から酸素の取り込んだ状態になると脳のネットワークが構築されるので「頭が良くなる」のです。
(脳の酸素の働きを計る技術として、脳機能イメージング法COEがあります)
では、正しい呼吸そして情報(環境)づくりを考えて行くとやはり口呼吸より鼻呼吸そしてその環境づくりの1つの方法が
口の体操「あいうべ」(今井一彰先生考案)となるのではないかと思います。
実際に口の体操「あいうべ」を脳機能イメージング法COEで計測したところ、呼吸に関係する脳部位に対して、脳のマッサージ(脳血流の上昇と低下、酸素消費)をするような効果が認められました。<参考資料3>



● 咀嚼と脳

 食事をしてグルコース(糖)を口から取り入れます。グルコースは脳神経細胞にとって大切です。もし低血糖になった場合、一言でいうとこの神経細胞を壊してしまうからです。これは非常に怖いことです。
 ここで脳と体の各部の関連をペンフィールドの脳地図<参考資料1・2>から見ていくと、口と手の領域が大きく特に口の領域の咀嚼、唾液分泌、嚥下などは内部に広がり、なおかつ、長さも脳の表面のラインの3分の1を占めるほど長いことが分かります。
そして、咀嚼、唾液分泌、嚥下などの部分が脳の内部にあり外部から障害を受けづらい所に位置することは口が生命維持に大切な部分であるためではないかと推察されます。
また、口の領域においては運動野のほうが体性感覚野よりはるかに大きいことも注目されることです。ここで体性感覚野のほうが小さく運動野が大きいことから考えると、きちんとした訓練をし学習を続けて行かないと、この部分の機能は衰える可能性が予測されます。
つまり咀嚼は学習によって学ぶものそして良い情報(経験)を反復することが大切になります。
「歯・口は生命維持のために重要な臓器」であり、歯・口が感じる刺激は「脳を鍛え育てる」ことにつながるという、新しい視点が示されたように思われるのです。
「口や歯に良い刺激を与えれば、口腔内の環境を整えれば、脳の広い範囲に良い環境を構築できる」この様に理解できると思います。



● 正しい咀嚼(正しい噛み方、噛み合わせ)

「咀嚼とは、摂取した食物を歯で咬み、粉砕すること、噛むなどと表現される」とあるが、よく「一口30回噛みましょう」と言われています。しかしこれは良く噛むということの量的な要素に過ぎないのではないでしょうか?
よく噛む(正しい噛み方)ということを質的な要素から考えてみると、
@ 感謝(徳育)の気持ちを持って噛む
A よい歯で噛む
B 正しい噛み合せで噛む
C 正しい姿勢で噛む
D 左右で平等あるいは交互に噛む
E 味わって楽しく噛む
F 自然に食道に流れ込むまで噛む
(「食と教育」 船越正也 著 より)

以上の7カ条が大切であり、また船越先生は「この正しい噛み方を実践できるように口腔周囲及び全身の環境を整備及び指導することが歯科医師の役目であろう」と述べています。
以上の事から、30回噛む前に前準備として正しい噛み合せ(咀嚼)、バランスのとれた体、正しい姿勢ということが大切ではないかと思います。

 また、最近では「咀嚼」の乱れから、体のバランスを損ない、その影響により全身の健康に問題を起し、ひいては寿命を縮めるという様なことも認識されつつあります。
このことについては、体を支えているのは、頸部から腰部の体幹ですが、バランスを保つ上で重要なのは下顎です。
下顎は体に対して振り子のような役割を果たしているので、体のバランスが乱れると影響を受け、これを補正する方向に動きます。
 このことにより、下顎周囲の筋肉や顎関節、そして口や歯など他の期間も影響も受けてしまいます。
下図<参考資料4>

このような状況になってしまうと、いわゆる「咀嚼」を正しく行うことが難しくなってしまいます。
このように顎と咀嚼は切っても切れない関係にあり、前述のペンフィールドの脳地図から推察されるように体の各部分(特に口、手、足)を使い訓練し学習し続けることが「正しい咀嚼(正しい噛み合せ)」そして「脳づくり(脳の手入れ)」になると考えます。



● ではどうしたら良いのでしょうか?


ここでは特別な器具や方法そして術者(他者)からのアプローチなどが必要なく自分自身(自力)による方法、特に歯・口、手、足を利用した事柄を取り上げたいと思います。
@ 腹式呼吸
A 口の体操「あいうべ」
B 足握手
C 手首振り
D 足首回し
E 舌回し
F ガム咀嚼トレーニング
G ブラッシング
H 食事の仕方 <参考資料5>
これらいづれのエクササイズも脳機能イメージング法COEで計測したところ脳に対しての作用が認められています。



● まとめ

これまで述べさせていただいた内容は主に私自身が開業医として臨床を通し疑問に感じていた諸問題を方向性(ベクトル)を変えることで解決できないかと考えたことを(株)脳の学校代表 加藤俊徳先生(医師・医学博士)の御協力・御指導を頂いて研究した内容です。
なにぶん私一個人の研究ですのでデータとしては数が僅かで課題も残されておりますが、咀嚼と呼吸の機能向上そして脳を含めた全身へのアプローチが歯科からできる可能性があるのではないかと感じております。

 最後に、私がこの様な歯科治療の役割を模索していくキッカケになった言葉(本の一節)を紹介させて頂きます。
「歯科の治療は、2本の脚起立して社会的・経済的・精神的に生活しているヒトの頭蓋―下顎―頸・肩(腕)の生理的・機能的な維持を図ることを目的としているのではないか」
(「君たち、なぜ歯科医になったの?」  加藤元彦 著  ヒョーロン 刊 )





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